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地域固有の食の体現、長寿の秘訣を学ぶ

2022.6.09

つながり

薬膳茶

琉球料理宮廷料理の実食を通して沖縄の食材と食文化の歴史にふれる。ブルーゾーン地域の長寿にまつわる医食(薬食)同源思想、伝統島野菜の食講座と実食体験を行いました。

健康長寿県として注目される沖縄において、戦前から導入され、伝統的に食されてきた地域固有の島野菜。その秘密を学ぶため、ブルーゾーン沖縄ウェルネスツーリズムでは、沖縄第一ホテルの女将、渡辺克江さんをモデレーターに、国際中医薬膳師であり、琉球料理伝承人でもある宮國由紀江氏による琉球薬膳講習を行いました。

沖縄第一ホテル2代目女将:渡辺克江氏
沖縄第一ホテル女将であり、琉球料理保存協会の理事、野菜ソムリエ、フリーアナウンサー、那覇市観光協会副会長など、多彩な顔をもつ渡辺氏。地域の人々や文化を通じ、訪れる人々をつなげてくれる大きな存在です。

宮國由紀江氏
国際中医薬膳師、琉球料理伝承人、栄養士
「食べることは生きること」病院勤務を通して、食がもたらす健康への影響を実感したという宮國氏。たどり着いたのが琉球王朝時代に出された食養生本「御膳本草」。そこから薬膳の研究を重ね、沖縄に根付いていた「食はクスイムン」の考えを取り戻すべく活動されています。

今回の琉球薬膳講習会を行うのは、沖縄第一ホテルの離れの部屋。感染症対策もしっかり行われた上、歴史ある美術品で整えられた情緒漂う部屋で、心落ち着く雰囲気の中で進められました。

場をあたためるお茶とお菓子でおもてなし

お二人の自己紹介ののち、宮國先生お手製の薬膳茶とお菓子がもてなされました。まずは薬膳茶を通した学びの時間です。本ツアーの実施は5月の梅雨真っ最中。この時期から夏にかけては、湿気と暑さで体調がくずれがちです。それは体内に湿気がたまることによる不調。

そこで今回は、体内の湿気を吸収してくれる効果の高い食材(シマゴボウ、アロエ、ゴーヤー、バンシルー)と、デトックス効果により失われた体力を補いつつ、全体をまろやかに調和する効果のある黒豆をブレンドした薬膳茶でおもてなしをうけました。

考え尽くされた薬膳茶の味わいを堪能します。

薬膳茶は、1種類ではなく、複数の食材をブレンドすることで調和されるそうです。「自分でブレンドする際には、体を温める食材と体を冷やす食材をブレンドするといいですよ」とのこと。

お茶のお供には、見た目にも美しい琉球菓子とアメリカ文化のお菓子をあわせます。中国との交易から発展してきた沖縄伝統のお菓子と、近代欧米文化から沖縄で根付いてきたお菓子。ここにも他国との交流とともに発展してきた沖縄の歴史を垣間見ることができます。

伝統的な食文化と近代の食文化

沖縄県では、沖縄の伝統的な文化を、琉球料理という沖縄独自の料理文化に基盤をおき、食材や調理法、風俗習慣などの様々な要素を包含した生活文化とさだめ、伝統的な沖縄食文化として9つの要素をあげています。
「食材」「調理法」「味わい」「栄養」「菓子」「酒」「茶」「食器」「風俗習慣」

近代の産業発展の中で、欧米化してきた食文化。地元である沖縄の人々でさえ、沖縄料理や琉球料理を知らない人も増えてきました。しかし、今では世界的に見ても、健康と食に関する関心は高まってきており、その中で語られることは、すでに過去の沖縄に知恵として存在していたとのことです。そんな沖縄の食文化を1つ1つ紐解いていくと、琉球料理の奥深さに気づかされるとともに、これからの食のあり方についてヒントが得られるかもしれません。

今回の講習では、4番目の「栄養」について学びます。

食と向き合い続け、たどり着いたのが「食医学書 御膳本草」

「御膳本草」は、今から186年前、琉球王府侍医頭の渡嘉敷親雲上通寛が琉球王・尚灝(しょう こう)の命を受け、北京で医学・薬学・鍼灸などを学び、帰国後著した書物で、幅広い医学知識に基づいた琉球の食医学書です。当時の食べ物約300種の効能や食い合わせの禁忌、調理法などが書かれています。
※尚灝:第二尚氏王統・17代目国王
※親雲上:琉球王府時代の士族の称号、ぺーちん、ペークミーと読む

琉球料理は神業

沖縄のおばぁたちから聞かされていた食べ物の知恵。どこにもその根拠を見つけられなかった謎が、この御膳本草にはるか186年前に存在していたことの衝撃を覚えたそうです。
そして、宮國氏みずから調査を進め、これらの根拠は科学的にも証明されていることが分かってきました。古の沖縄の人々は、築いてきた歴史の中で、誰に教えられるともなく理にかなった食べ物の組み合せ、調理法を体得していたのです。近代化の食文化の変化にともない、口伝で伝えられてきたその考え方は失われつつあり、それが健康長寿へ影響を与えているだろうことは想像に難くありません。
研究を進めれば進めるほど、「琉球料理は神業である」と気付かされると宮國氏はいいます。

食べ物はクスイムン(薬)

古の沖縄の人々が脈々と受け継いできた食文化。それは、日々の生活の中で、季節を感じ、自らの体調の変化を感じ取り、その中でただただ最適な道を探した結果ではないでしょうか。
食べ物はクスイムン。けれど、薬にも毒にもなる。

地域の気候や風土の中ではぐくまれた食材や食文化。
後世に残そうと書に託された秘伝、そして口伝で語られてきた知恵。
そんな秘伝や知恵が、渡邉氏、宮國氏を通じて蘇ります。

本ツアーで得るものは、講義を受講するだけでなく、学びという体験を通じて、「人のつながりがもたらす気づき」そのものなのかもしれません。ブルーゾーン地域ならではの食の体現、そこには古より今も変わらず、健康で長生きできる日常を願い、食のもたらす恩恵を今ここにいる人々、そして未来の人々へと受け継ぐべく研究を重ねる姿がありました。

宮國由紀江氏

講師:宮國由紀江 氏
約11年総合病院に栄養士として勤務し、その後独立。宅配弁当治療食専門店を開業。薬膳料理を通して中国伝統医学を学ぶ。「食べ物はクスイムン」の原点とな る、琉球の食医学書「御膳本草」に出会い、琉球の食文化に中国伝統医学が深く関わっていることを知る。 その後、薬膳教室を開業。薬膳初級講座(日本中医食養 学会認定校)の講師を務め、現在は健康と美容をテーマに、沖縄に根ざした薬膳の考え方と御膳本草の研究と伝承に努めていく。


<沖縄第一ホテル>

1955年創業の老舗ホテル。先代より続く約50品目の薬膳朝食が人気
所在地:〒900-0013 沖縄県那覇市牧志1-1-12
TEL:098-867-3116


<ウェルネスブルーゾーンツーリズム>

地域資源を熟知した観光協会と密に連携するとともに、ツアー参加者が地域固有の生産者、加工業者、文化芸能家、住民と直接関わることで、現実を体感し、学び交流し「自然」「地域」「人」とつながり沖縄ライフスタイルを体感。
人生をより美しく、より輝く豊かな人生へと導いてくれます。

本事業への詳細をお聞きしたい方はこちらへご連絡ください。

【ウェルネス沖縄ブルーゾーンツアー事業事務局】
一般財団法人沖縄県環境科学センター
業務部/総合環境研究所/SDGs事業実行班 岩村
〒901-2111 沖縄県浦添市字経塚720番地
TEL:098-875-1941
E-mail:s.iwamura@okikanka.or.jp
メッセージ:https://wellness-tourism-okinawa.jp/message/
ホームページ:http://www.okikanka.or.jp/